日本経済新聞 連載『あすへの話題』

2011年2月24日

ウォーキング・ミーティング

 多いときで週に3回、少なくとも週に1回は皇居周辺に自分で決めた1周約7キロのコースを70分ほどかけて早歩きする。歩き始めて16年以上になる。
 健康のために毎日の習慣にできる軽い運動をと思い、昼間の時間がとれる時に歩くことにしたのだ。これを三日坊主にしないために考えたのが、自分の趣味をプラスして楽しく歩くこと。私の趣味の一つは人と話すことだ。特に志を高く、目的意識を持つ若い人たちと話すのは楽しい。よし、若手の社員を誘って歩こう、と考えた。
 歩きながら交わす会話は仕事の話題が多くなる。ちょっとしたミーティングの様相。そうなってまもなく、私と直接話したい社員の中には、会議室ではなくこの歩く時間を利用しようという者も現れるようになり、私のスケジュールには「ウォーキング・ミーティング」という名称が書き込まれるようになった。オフィシャルな会議として定着したのである。
 雨の日も休まない。オフィスのある日比谷から銀座へと広がる地下道を利用したコースを約1時間歩くことにしている。
 続けるうちに気づいたことがある。歩いていると頭が冴(さ)え、アイデアを思いつきやすい。第三者に邪魔されないのも理由かもしれない。集中できるのだ。
 オープンな空間はリラックスさせるのか、社員も会議室とは違ったのびのびとした表情を見せる。自動車の騒音もほどよく、会話の内容は隣を歩く人にしか聞こえず、セキュリティーを気にする話もできる。
 運動不足を解消し、アイデアも生まれ、コミュニケーションも育つウォーキング・ミーティング。あとひと月もすると千鳥ケ淵の桜が歩く楽しみに加わる。