日本経済新聞 連載『あすへの話題』

2011年5月12日

理科離れ

 自動車、家電、携帯電話......、日本のものづくりは世界一だ。もっとよく、もっと便利にというこだわりが日本人にはあり、それは遺伝子に刷り込まれたものではないかとさえ思えてくる。もちろん教育の力も大きい。江戸時代から寺子屋というシステムがあり、明治の開化期にダイナミックな社会の変化を遂げる土台となった。そして、100年後の科学技術立国へと続いた。
 その日本で、子どもたちの理科離れがいわれるようになって久しい。大学入試制度など原因はさまざまいわれている。しかし、その解決策となるとどうだろう。
 私は民間の力を活用すべきだと考える。子どもが理科を好きになるか嫌いになるかには、小学校、中学校で教える先生の影響も大きく、自ら理科にやりがいを感じている人が教えることが大切だ。日本には世界に誇るべきものづくりの企業が多くある。それらの企業が、若いエンジニアを理科の先生として派遣するシステムができないだろうか。ものづくりの第一線で活躍しているエンジニアによる生きた授業が、子どもたちの興味を大いに刺激することは想像するに難くない。
 これには下敷きがある。以前にあるシンポジウムで、ノーベル物理学賞を受賞されている小柴昌俊氏が「理科をやっている大学院生に自分の出身中学で、ある期間教えさせ、その分、奨学金の返還を免除してやればいい。カナダなどではそうやっており、子供の理科離れなんてない」と語るのを聞いて考えた。
 教育には時間がかかり、50年、100年という単位で考えなくてはならない。日本の遠くない未来のために、理科離れの解消を急ぐべきだと思う。