日本経済新聞 連載『あすへの話題』

2011年4月28日

週末、北京にて

 先の週末、清華大学の建校100周年大会に出席した。胡錦濤、呉邦国、習近平......北京の人民大会堂に並ぶ顔ぶれに、清華大学が輩出した人材の質の高さ、層の厚さを改めてみせつけられる思いだった。
 清華大学には、日本の社会や歴史、文化教育、経済などの研究を目的にする日本研究センターがある。近代化のプロセスなども重点的テーマで、日本の明治維新についても研究しているという。
 一昨年、同センターで講演をする機会をいただいた。講演後にお世話になった通訳の方と雑談するなかで、彼が吉田松陰の研究者であることを知った。流暢(りゅうちょう)な日本語を淡々とつかう彼が、吉田松陰の話題になると語り口調に熱を帯びる様子が印象に残っている。
 振り返ると私が初めて中国を訪ねてから30年以上が経(た)つ。第一歩は平山郁夫画伯のお供をして訪れた北京だった。当時の北京の通りはどこへいっても自転車ばかりで、自動車を見ることはなかった。
 「経済ばかりではね」
 そんな北京の街の様子を眺めながら、画伯は静かに語りかけてくださった。
 「私たちは尊敬される日本人であることを目指すべきではないでしょうか」
 当時の日本は高度経済成長期のまっただ中。経済大国としての地位を着々と固める、そんな時代だった。
 国を動かすリーダー教育のために、日本の明治の教育手法を研究する清華大学。文化財赤十字活動に取り組み、世界で尊敬される代表的な日本人になった平山画伯。日本の教育のあり方を見直すための何かしらの示唆があるのではないだろうか......。そんなことを思う北京滞在となった。