日本経済新聞 連載『あすへの話題』

2011年4月7日

大切なふるさと、東北

 私のふるさとは、生まれた東京や小学生の頃に疎開した香川などいくつかある。私は、誰もが三つの種類のふるさとをもっていると思う。一つは出身地、自分が生まれ育ったふるさと。二つ目は縁を持つふるさと。妻や夫の故郷だったり、転勤地だったり、友だちが暮らす場所だったり。そして、三つ目は心惹(ひ)かれるふるさと。旅行して好きになった場所も、訪ねてみたいと憧れている土地もふるさとだといってもいい。
 ふるさとのことを改めて考えたのは、東日本大地震の被災地への支援のことを思ったからだ。被災地では国内はもちろん世界各国から人的支援や物資が届けられ、復旧が進む。しかし、千年に一度といわれる大震災の爪あとはあまりにも深く、復興までの道のりが平坦(へいたん)でないことは誰もが思うところだろう。その道のりも短いものではない。だから、みんなの応援する気持ちが半年や一年で風化してはならない。文字通りオールジャパンで持続的な取り組みが不可欠である。
 故郷が被災し、その故郷を離れて暮らす人は日本や世界の各地にたくさんいるだろう。彼らはふるさとを案じ、ふるさとの一日も早い復興を心から願い、ほぼ永遠ともいえる継続的な応援を続けるはずだ。
 私たちも同じでありたい。そして、東北をふるさととして応援するのは東北で生まれた人だけではないとも思う。私は仙台駅のステンドグラスの制作など親しいおつきあいが多くある。海の幸、山の幸、大好きな食べ物も数えきれない。私にも東北は大切なふるさとだ。ふるさとを思う気持ちに終わりはない。ふるさとを愛する気持ちは、復興へ向かって日本全部で進むための大きくて持続する力になると私は信じる。