日本経済新聞 連載『あすへの話題』

2011年3月10日

2つのステンドグラス

 新幹線のニュースが続く。はやぶさが運転を始め、明後日は九州新幹線が全線開業、新大阪~鹿児島中央間が3時間台に突入する。速さと快適さが旅行する楽しみを広げ、多くの利用客で賑(にぎ)わうことだろう。
 私も今週の木曜日(今日!)はJR博多駅を訪ねる。九州新幹線全線開業を記念したパブリックアートの制作を公益財団法人日本交通文化協会が担当したご縁で、その除幕式に参列させていただくことになった。
 設置されるのは博多駅4階の新幹線と在来線の乗り換え通路。高さ2・5メートル、幅7・5メートルの大きなステンドグラスで、タイトルは『海の向こうから』。原画と監修は文化功労者の野見山暁治さんによる。
 福岡県出身の画伯が原画に表現したのは自らの故郷であり、祖先から受け継がれる時の流れ。そこに描かれた遙(はる)かなる大陸から渡ってきた風に波立つ青い海が、ドイツ製アンティークグラスを素材に、ステンドグラスならではの広がりと奥行きで再現できたと思う。駅では珍しく自然光を利用できたことも特筆したい。季節によって、一日の中でも時間帯によって異なる表情を見せてくれるはずだ。
 九州新幹線との縁はもう一つ。7年前の部分開業時に、南の起点、鹿児島中央駅の新幹線コンコースに設置された大型ステンドグラス『桜島』(原画・田崎廣助氏)を制作させていただいた。これも自然光による貴重な作品で、日差しを浴びて床面につくる美しい映り込みも喜ばれている。
 これらの作品が人々の旅の思い出の一つになれるなら、作家はもちろん裏方としてパブリックアートに携わる私たちにも大きな励みとなる。駅のアートを旅の楽しみに加えていただければうれしい。