日本経済新聞 連載『あすへの話題』

2011年1月20日

高齢化社会と芸術家

 今年も新成人の人口は過去最少を更新した。世界でも速いペースで進む日本の少子高齢化が深刻な問題として取り上げられるようになって久しい。
 私は、少子化の解消は必要として、この事態を悲観するだけでなく前向きに捉えたい。日本には世界2位のGDPを支えてきた科学や技術の蓄積がある。その力で「高齢化先進国」を目指してはどうだろう。やがて少子高齢化は世界共通の課題になるはずだ。そのとき日本は手本となり、理想的な高齢化社会を実現した先進国としてさまざまな知恵やノウハウを提供するのだ。
 テーマに"ぼけない高齢化"が想定される。重要なヒントをくれるのが芸術家だ。私は理事長を務める公益財団法人日本交通文化協会で、パブリック・アートの仕事を通じ多くの芸術家とお付き合いしてきたが、皆さん、年齢を重ねても創作を続けている。尊敬する日本画家・片岡球子先生は、100歳を数えても後進を指導し、創作意欲を燃やし続けた。
 芸術家が年老いても活躍できるのはなぜだろう。美のイデアを追求して創造を続けるから芸術家の脳は衰えにくいのではないか。新しい物事に強い興味を持って脳を働かせていれば何歳になっても脳は進化するのではないか。私はそう考察する。
 常に創造し続けることだと思う。それは、芸術家ではない私たちにもできる。たとえば、向上心を持って囲碁を打つのもいいだろうし、ビジネスでも新しい領域に挑んでいれば脳はフル回転で働くだろう。
 パブロ・ピカソは「明日描く絵がいちばん素晴らしい」と言った。明日打つ碁が、創るビジネスモデルがいちばん素晴らしい。いつもそういう気持ちでいたいと思う。