日本経済新聞 連載『あすへの話題』

2011年1月6日

楽をして成功する方法

 自己紹介代わりに昔話をお許しいただきたい。私は、大学卒業後に勤めた会社を4年目に退職した。将来のベンチャーを目指しての決断だった。しばらく浪人時代を過ごしたが、最初にしたことは、楽をして成功できる方法を研究することであった。
 起業する前に、最小の労力で大きな成果をものにする方法を見つけてやろうと、その事例となる人物はいないかと探した。同じ目標を達成するなら、スリムに無駄なく仕事をしたほうがいい、そのためにはどうすればいいのかを追求したのだ。
 豊田佐吉の資料を展示する部屋を見る機会があった。20代で豊田式木製人力織機を発明し、50代にG型自動織機を完成させるのだが、年月を重ねるほどすさまじい進化を遂げていくさまを目の当たりにした。楽などという言葉は感じられず、その対極にあるようにすら思えた。そして、そこに残された文献の中で、ゲーテは「人生に成功する秘訣は自分が好む仕事をするのではなく、自分のやっている仕事を好きになることである」と、エジソンは「天才とは1%のひらめきと99%の汗のたまものである」と教えていた。
 楽をして成功する方法を探す私の旅に終止符が打たれた。3、4年間は続けたその研究に成果はなく、30歳の私は自らの不明を恥じた。失敗も、無駄と思える頑張りも必要なのだ。誰もが自らの目標と真摯に向き合い苦労を重ね、成功にも満足せずに次なる目標を模索している。それを納得できたことが成果といえるかもしれない。
 あれから40年が過ぎた。当時の体験は、私の仕事の仕方の原点となっている。新しい年の始まりに、今年も労を惜しまず新しい何かに挑戦したいと思っている。